ベガルタ仙台 CSR・復興への取り組み

“心の復興”を目指して
石巻市でビジャレアルを招きマイナビインターナショナルカップを開催

復興支援の一環として、スペインの強豪ビジャレアルのU15レディースチームが石巻市でキャンプを実施。カップ戦への参加と地域との交流を行った。

400年以上続くスペインとの縁

 昨年からベガルタ仙台と石巻市の間で締結した復興支援協定。ベガルタ仙台としては被災地のクラブとして一層の復興支援を果たし、地域の活性化に寄与したいという思いを持って、また石巻市としてはスポーツや健康事業が果たす“心の復興”への期待を込めて、これまで様々な事業を展開してきた。

 そしてこの7月5日から11日にかけて、スペインの強豪ビジャレアルのU15レディースチームが石巻市でキャンプを実施した。また期間中の8日、9日には同市でマイナビインターナショナルカップを開催。マイナビカップは4年目にしてついに国際マッチへと成長した。

 石巻市の亀山市長は、大会の冒頭で「スペインと石巻市は支倉常長の遣欧使節以来の長い交流がある。熱い試合を展開して被災地に勇気と元気を届けるとともに、国境を超えた友情を育んで欲しい」と選手を激励した。

古豪ビジャレアルのミッション

 今回石巻市でキャンプを実施したビジャレアルは、世界的な古豪、強豪として知られている。ビジャレアルはサッカーのとても盛んな地域としても知られ、人口5万人の小さな田舎町に2万5千人収容のスタジアムがあり、そのうち2万席近くがホームの年間チケットで埋まるという。また競技人口も多く、幼児からお年寄りまでがサッカーに親しんでいるため、地域の人達が生涯サッカーを楽しめる環境の提供もクラブのミッションの一つなのだという。

 スペインの女子サッカーは、この2年ほどの間に急激にプロ化が進むとともに環境の激変にさらされている。ヨーロッパ最高額とも言われるスポンサー料がクラブの強化に充てられ、結果的にスペインの代表チームも着実に実力を向上させている。

 石巻市を訪れたU15チームは5つある女子カテゴリーのうちの2つにまたがる合同チーム。女子カテゴリーすべての責任者を務めるのが佐伯夕利子氏という日本人女性だ。

 佐伯氏は「田舎町で育ち、閉鎖的なメンタリティーを持つ傾向にある我々にとって、地球の裏側まできてキャンプを行う機会など滅多にありません。それだけでも大きな価値があります。加えて、大きな震災を経験した街でもありますし、サッカーだけが上手な子ではなく、人間形成にフットボールを活用しようという私たちの育成方針にとって、現地に出向き、人々と触れ合う機会はとても重要です。この期間は、文化や言語の違いを肌で感じ取れるようなキャンプにしたいです」と狙いを語る。

 地元の中学生との交流を通じて、ナタリア・センテージェス選手は「被災から6年間にわたる地域の人たちの復興に掛けた思いと、行動力の素晴らしさを感じ、力をもらった」と選手だちは期待通りに現実を受けとめ、貴重な機会、時間の中で多くのことを学び取っていた。

 さらに「地方都市の、決してビッグクラブとは言えない状況の中で、育成にも力を入れながら、クラブが地域の支えになることを大切にしている部分において、ベガルタとビジャレアルは似ている」と佐伯氏。「今回は様々な縁があって、私たちは石巻に来ることができた。これからも色々な交流をしていきたい」と一過性ではなく、継続的に広がりのある被災地支援を通じて、両クラブの関係性発展に注力する方針だ。

マイナビインターナショナルカップ開幕

 そして開幕となったマイナビインターナショナルカップ。炎天下の石巻市総合運動公園には、ビジャレアルレディースU15(スペイン)をはじめ、SHRINE.L.FC(青森)、五戸スポーツクラブ(青森)、秋田L.F.C.ユース(秋田)、盛岡ゼブラレディースFC(岩手)、鶴岡キャロル(山形)、河内ジュベニール(栃木)と我らがマイナビベガルタ仙台レディースジュニアユースが集った。

 開会式では、ビジャレアルの選手たちが復興に向けたメッセージを記したユニフォームを着用し大会に臨むことが発表された。またミサンガの購入が難病克服に向けた研究費に充てられるビジャレアルのチャリティープログラムが紹介され、ベガルタ仙台が300本を購入し、大会参加者に手渡されることがアナウンスされた。

 大会は予選ラウンドから、参加したすべてのチームが暑さを物ともしない闘志を見せ、白熱した展開となった。そんな中ビジャレアルとマイナビベガルタは予選をともに全勝で勝ち抜け、決勝でついに対戦となった。

 パスを繋いでの崩しからゴールに迫るマイナビベガルタに対し、ビジャレアルはフィジカルの強さを活かした攻めと高い戦術眼でマイナビベガルタのゴールに襲いかかる。互いに2点を分け合い、PK戦の結果でビジャレアルの勝利に終わった。

 試合を通じ前述のナタリア選手は「コンディションの良い状態で大会に挑めた。人工芝が主流の私たちには、天然芝は難しかったです」と、異なった環境での戦いを新たな経験とし、成長に変えた。また、コーチのビクトリア・モリーナ氏は「礼儀正しく、ルールを守る姿を実際に見て、これは良いと思った。スペインに持ち帰りたい」と日本人選手を評価した。

 またマイナビベガルタジュニアユースの千葉泰伸監督は「ビジャレアルの印象としては、力の抜きどころや賢さなど、ゲームをコントロールする力を感じた。そして大きく、強く、速いというフィジカルの違いなど、選手たちにはグラウンド上での気づきを糧にしてほしい」と語るとともに「自分たちで気づかせ、考えさせようという育成方針には共感した」と、大会開催から得た重要な意義を振り返った。

育まれた友情、そして“心の復興”へ向けて

 今回の一連のキャンプは、ただサッカーに明け暮れていたわけではない。ビジャレアルの選手たちは、歓迎レセプション、住吉中学校への学校訪問、フェアウェルパーティーを通じ、地元石巻の市民や中学生、カップ戦参加チームの選手たちとも触れ合い、友情を築いた。

 千葉監督は、「サッカーはもちろん大切だが、それ以上に言葉は通じなくても心から打ち解けてコミュニケーションを取れた経験は大きな財産になる。育成年代を担当する者にとってだけでなく、クラブとして大きな意味があると思った」と語った。

 亀山市長は、こうした一連の復興支援事業の将来像について、「連携協定の締結以降、石巻市では健康部と連携してサッカー関連以外にも健康教室の開催などを行っており、多くの市民が喜んでいる。この先“心の復興”、つまり市民が笑顔を取り戻すためにも、スポーツの力は大きい」と手応えを感じつつ、今後に期待を寄せた。

 同市長は、「被災地で次なる大きな課題は孤立対策だ」と続け、「独居高齢者などを閉じ籠もらせずに、外出するよう働きかける取り組みが重要になるが、そこでもベガルタ仙台との交流、スポーツでの健康維持はますます必要になる」と断言する。

 千葉監督も「目に見える形での支援は難しいかもしれないが、続けることが大切だと感じている。サッカーを通じて元気づけ、少しでも復興の力になるような活動ができるよう、これからも協力していきたい」と力強く意思表示した。

 ベガルタ仙台ではこれからも石巻市との復興支援連携協定の枠組みを通じ、被災地の復興支援に取り組むとともに、地域の活性化や域内のサッカーの振興にも引き続き携わり、“心の復興”の一助となるべく活動を継続していく。